起業で本当に気をつけること|優先すべきは「やるべきこと」

起業という新たな一歩は、希望と同時に「何から手をつければいいのか」という不安もつきものです。

やるべきことが山積みになる中で、つい目の前の楽しい作業に時間を使い、後で後悔することも少なくありません。

この記事では、起業で気をつけることとして最も大切な「優先順位」の考え方について、データや専門家の視点を交えながら分かりやすく解説します。

目次

起業で真っ先に気をつけること。それは「やるべきこと」の優先順位

起業で気をつけることは数多くありますが、まず押さえていただきたいのが「やるべきこと」の優先順位を間違えない、という点です。

つい創造的で楽しい「やりたいこと」に時間を使いがちですが、事業の生命線を握っているのは、実はもっと地味な「やるべきこと」だったりします。

私自身も、楽しみながら行える情報発信はつい時間を忘れて没頭してしまいがちです。

この「楽しい作業」が本当に「やるべきこと」の時間を奪ってしまう危険性を自覚しているからこそ、意識的にタスク全体の優先順位に立ち返るように気をつけています。

事前にやるべきことをリストアップし、その優先順位に基づいて一日のタスクを計画する。

このような計画的な習慣こそ、起業で気をつけることの基本と言えるでしょう。

つい「やりたいこと」を優先してしまう心理的な罠

では、なぜ多くの人が「やるべきこと」から目をそらし、「やりたいこと」に流されてしまうのでしょうか。

これは意志の弱さの問題ではなく、ごく自然な心理が働くためです。

起業で気をつけることの一つに、この自分自身の心理状態の理解があります。

人は、すぐに結果が見えたり、達成感を得やすかったりする作業を好む傾向があります。

ロゴのデザインやウェブサイトの作成は、目に見える成果があり「前に進んでいる」という実感を得やすいでしょう。

一方で、数ヶ月後の資金繰りを計画したり、一件ずつ地道な顧客アプローチを続けたりすることは、精神的な負担も大きく、成果がすぐに出るとは限りません。

この「心地よい達成感」に浸ってしまうのが、起業初期の落とし穴です。

本当に事業を成長させるのは、後者のような地味で時間のかかる「重要」なタスクです。

この心理的な罠を理解した上で、意識的に行動をコントロールすることが、とても重要になります。

「やるべきこと」を見極める具体的な方法

頭ではわかっていても、タスクが山積みになると、何から手をつければ良いか分からなくなりがちです。

そこでおすすめなのが、タスクを「緊急度」と「重要度」の2つの軸で整理するシンプルな方法です。もちろん、この「やるべきこと」は業界によっても変わってきます。

1. 第1領域:緊急かつ重要(事業の守り)

  • 例:資金繰り、税金の支払い、顧客からのクレーム対応、在庫管理・発注
    これは事業の存続に直結する、最優先で取り組むべきタスクです。例えば「月末の支払いに間に合わない」「税金の納付期限を過ぎてしまった」という事態は絶対に避けなければなりません。
  • 業界別例:
    • 飲食業なら、日々の食材管理や衛生管理。
    • IT系なら、サーバーダウンや顧客からのバグ報告への即時対応。
    • ペットサロンやブリーダーなら、動物たちの毎日の健康チェックや施設の清掃・消毒。命を預かる事業の根幹であり、何よりも優先されるべきタスクです。

2. 第2領域:緊急ではないが重要(未来への投資)

  • 例:新規顧客を開拓する仕組み作り、会計処理の仕組みづくり、新商品・サービスの開発
    ここで、「やるべきこと」の重要性を裏付けるデータをご紹介します。
    例えば、中小企業庁が公表している統計データ(東京商工リサーチなど調査)を見ても、企業の倒産における主要な原因の一つとして、繰り返し「販売不振」が指摘されています。
    この事実が示すように、まさにこの第2領域に分類される「顧客開拓」や「サービス改善」こそが、事業を継続させる上で最も重要な活動なのです。
  • 税理士視点の補足:
    会計処理の仕組みづくりは特に重要です。
    日々の売上や経費をどんぶり勘定にせず、早期に会計ソフトを導入したり、記帳ルールを決めたりすること。これは後々の融資申込や正確な経営判断に不可欠です。
    税理士として見ていても、ここを疎かにして後で苦労される方は本当に少なくありません。
  • 業界別例:
    • 飲食業なら、新メニュー開発やリピーター様向けのキャンペーン企画。
    • IT系なら、将来のための技術開発やセキュリティ対策の強化。
    • ペットサロンやブリーダーなら、飼い主様との信頼を深めるための情報発信(しつけのコツや健康に関する豆知識など)や、スタッフの専門知識向上のための研修、法令で定められた登録更新の準備などが挙げられます。

3. 第3領域:緊急だが重要ではない(効率化すべきこと)

  • 例:多くの電話やメールへの即時対応、重要度の低い会議

4. 第4領域:緊急でも重要でもない(やめるべきこと)

  • 例:目的のないネットサーフィン、過度な情報収集

第2領域のタスクは、すぐにお金にはならなくても、将来の売上や利益につながる「投資」です。

1ヶ月後、3ヶ月後にどうなっていたいかを考え、そこから逆算してタスクを選ぶ視点も大切です。

状況の変化に合わせて優先順位を見直す

最後に、起業で気をつけることとしてもう一つお伝えしたいのは、一度決めた優先順位が絶対ではない、ということです。

経営はまさに生き物で、市場の動向、顧客の反応など、状況は刻一刻と変化します。

昨日まで最優先だったタスクが、今日にはそうではなくなることも時として起こります。

大切なのは、計画に固執するのではなく、変化を敏感に捉え、柔軟に優先順位を見直していく姿勢です。

週に一度、あるいは月に一度、立ち止まって「計画と現状にズレはないか?」と軌道修正する時間を持つことが、長期的に事業を継続させるための秘訣です。

私は最近タスクシュートというその日のタスクにフォーカスする手段を取り入れて毎日タスクを見直すようにしています。

経営の「壁打ち相手」として税理士を活用しませんか?

起業すると、すべての意思決定を一人で行う場面が増え、孤独を感じることもあるかもしれません。

そんな時、私たち税理士を「経営の壁打ち相手」として活用するという選択肢があります。

税理士の役割は、税金の計算や手続きだけではありません。

多くの企業の数字を見てきた客観的な視点から、あなたの事業の現在地を確認し、次の一手を共に考える伴走者にもなれるのです。

「何から手をつければいいか分からない」という漠然とした不安から、「この投資は妥当か?」「資金繰りは大丈夫か?」といった具体的なお悩みまで。

一人で抱え込まず、専門家と話すことで、きっと視界が開けるはずです。もしよろしければ、一度お話をお聞かせください。

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