事業を営む上で、日々の業務効率化は永遠のテーマですよね。
そんな中Geminiなどの「生成AI」は、私たちの働き方を根底から変える強力な武器になると注目されています。
しかし、その圧倒的な利便性の裏で「ただ答えをもらうだけ」の使い方に終始し、気づかぬうちに、経営者として最も重要な「思考する力」を衰えさせてしまうリスクも同時に存在します。
この記事では、単なるAIの便利な使い方ではなく、専門家として、そして一人の事業主として、私たちがこの新しいパートナーと、どのように向き合っていくべきか、その本質について解説します。
生成AIとの正しい向き合い方とは?
まず結論から申し上げると、生成AIとの正しい向き合い方とは、AIを「答えをくれる機械」としてではなく、自らの思考を深め、業務を補完してくれる「優秀なビジネスパートナー」として捉え、主体的に使いこなすことと考えます。
AIは、私たちが投げかけたアイデアに対して、常に「素晴らしいですね!」と、優しく肯定してくれます。
これは非常に心地良い体験ですが、その肯定的な答えだけを鵜呑みにしていては思考は一歩も前に進みません。
本当に重要なのは、そのAIの答えを「出発点」として、そこからいかに自分の思考を深めていくか、というプロセスです。
そのためには、AIに対してあえて「反対意見」や「想定されるリスク」を尋ねてみることが、非常に有効な一手となります。
生成AIは最高の「壁打ち相手」、思考を深める使い方
まず一つ目の、そして最も重要なAIの活用法が、思考を深めるための「壁打ち相手」としての役割です。
私たちは、ついAIに完璧な「答え」を求めてしまいがちですが、AIの本当の価値は、私たちが投げかけた問いに対して、鏡のように、様々な角度から光を当ててくれる「思考の壁」としての機能にあると考えています。
例えば、新しい事業計画についてAIに尋ね、「素晴らしい計画です」という最初の答えに満足するのではなく、「では、この計画の弱点はどこですか?」「競合他社が、この計画に対抗してくるとしたら、どんな手を打ちますか?」と、追加の質問を投げかけてみる。
この「壁打ち」を繰り返すことで、自分一人では思いもよらなかった視点やリスクに気づき、計画はより強固で、実現性の高いものへと磨かれていきます。
AIは私たちの思考を「肩代わり」するのではなく、より強く、より深く、より多角的に鍛え上げてくれるのです。
生成AIは業務の「スキマ」を埋めるアシスタント、実務を補完する使い方
次に日々の実務における、より具体的なAIの活用法です。
ここでのポイントは、「補完的な使い方」を意識することです。
最近、税理士業界では通帳をデータ化するAIアプリなどが注目されています。
これは非常に便利なツールですが、システムの根幹は信頼できる専門のベンダーに任せるべきと考えます。
私たち専門家の役割は、そのAIが本当に意図通りに機能するかを、実務の中で検証し、使いこなしていくことです。
その検証の手間やリスクを考えると、現時点ではメイン業務をAIに任せるのではなく、「手入力は面倒だが、システムを動かすほどではない」という日常業務の「スキマ」を埋める、補完的な使い方こそが、最も賢明だと考えています。
このように、AIに仕事を「丸投げ」するのではなく、あくまで自分の業務を補完してくれる、優秀なアシスタントとして使う。
この距離感が、AIに振り回されず、主体的に使いこなすための鍵となります。
まとめ:AIに使われるのではなく、AIを使いこなすために
今回は生成AIとの向き合い方について、その本質を解説しました。
- AIは思考を深めるための「壁打ち相手」である。
- AIは日々の業務の「スキマ」を埋める、補完的なアシスタントである。
もし、私たちがこの原則を忘れ、AIがくれる最初の心地よい答えだけに満足し続けたら、おそらく、私たちの「思考する力」そのものが、少しずつ衰えていってしまうでしょう。
最終的に、どの道をどう進むのかを判断し、その結果の全責任を負うのは、他の誰でもない、自分自身です。
この新しいパートナーとの「絶妙な距離感」を保つことこそが、これからの時代に、私たちが専門家として、そして経営者として、生き残っていくための、唯一の方法なのかもしれません。