「自分の業種は、税務調査の対象になりやすいのだろうか?」 「最近、税務当局はどのような業種に注目しているのだろう?」
多くの経営者様が、このような疑問や不安をお持ちのことだと思います。
その問いに答える重要なヒントが、国税庁が公表する税務調査の業種ランキング、すなわち「申告漏れ所得金額が高額な業種の一覧」です。
この記事では、経営者の皆様がご自身の事業の税務リスクを客観的に見つめ、適切に備えるために、以下の点を分かりやすく解説します。
- 最新の税務調査 業種ランキングTOP10
- なぜこれらの業種が上位に来るのか(コロナ前後の変遷)
- ランキング上位だと、本当に税務調査は来るのか?
- 経営者が今すぐできる、調査に備えるための対策
税務調査の業種ランキングTOP10【令和5事務年度】
まず、国税庁が公表した最新のデータ(令和5事務年度)に基づく、申告漏れ所得金額が高額な業種の上位10位をご紹介します。ご自身の業種が関係しているか、確認してみてください。
- 経営コンサルタント
- ホステス、ホスト
- コンテンツ配信
- くず金卸売業
- ブリーダー
- 焼き鳥
- 太陽光発電
- 内科医
- スナック
- 西洋料理
なぜこの順位に?ランキングの変遷から読み解く3つのトレンド
この最新ランキングは、数年前とは大きく様変わりしています。
その背景、つまり税務調査の業種ランキングが示す「なぜこれらの業種が上位に来るのか」という理由を、コロナ禍を境とした時代の変化から読み解いていきましょう。
1. 主役交代:夜の街からデジタル・IT業へ
コロナ以前のランキングでは、「風俗業」や「キャバレー」といった、いわゆる夜の街の業種が長年のあいだ上位を独占していました 。
現金でのお取引が中心となりやすい事業特性から、税務当局が申告内容の確認を慎重に行う傾向にあると考えられます。
しかしコロナ禍を経て、「経営コンサルタント」(1位)や、以前から上位の「システムエンジニア」といったデジタル・IT関連業が完全に主役となりました 。
これは、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化により、大きなお金が動いている分野であることを示唆しています。
2. 新しい経済圏の出現:「おうち時間」関連ビジネス
最新ランキングで特に注目すべきは、「コンテンツ配信」(3位)や「ブリーダー」(5位)です 。
これらはコロナ禍の「おうち時間」の増加と共に急成長した、比較的新しい経済圏のビジネスです。
オンライン上の取引や個人間の高額な取引が増えている可能性があります。
3. 日常回復の兆し:飲食・対面サービスの再浮上
もう一つの興味深い動きは、対面型サービスの再浮上です。
「ホステス、ホスト」が2位に返り咲き、「焼き鳥」(6位)や「スナック」(9位)といった飲食・社交の場が新たに上位に入りました 。
これは、コロナ明けで人々の交流が活発化し、再びこれらの業種にお金が力強く動き始めたことの表れと言えるかもしれません。
ランキング上位だと税務調査は来る?経営者が本当に注意すべきこと
自分の業種がランキング上位だったら、税務調査は必ず来るのか?
答えは「いいえ、必ず来るわけではありません」です。
このランキングは、あくまで「調査した結果、申告漏れの金額が大きかった業種の平均値」を示すものです。
重要なのは、業種名そのものではなく、「なぜその業種で申告漏れが起こりやすいのか」という事業の特性を理解することです。
ご自身の事業について、一度以下の点を確認してみてください。
- 事業収入(現金、振込、カード等)が、申告の対象であると認識できているか?
- 現金での売上や経費の管理体制は整っているか?
- 経費として認められる範囲を、客観的な基準で判断できているか?
- 個人と事業のお金の区別は明確にできているか?
ランキング上位の業種には、こうした論点が多く含まれる傾向にあります。
そのため、税務当局は業種名だけで判断するというよりも、結果として申告内容に誤りや不明瞭な点が見受けられる事業者を調査対象として選定している、と考えるのが自然でしょう。
まとめ:ランキングを「道しるべ」として、自社の体制を見直す
税務調査の業種ランキングは、不安を煽るためのものではなく、ご自身の事業の税務リスクを客観的に見直すための「道しるべ」です。
どのような業種であれ、その特性を理解し、日々の経理体制をしっかりと整えることが何よりの対策となります。
もし、ご自身の会社の経理や申告に少しでも不安な点がございましたら、どうぞお気軽に私たち税理士にご相談ください。
皆様が安心して事業に専念できるよう、専門家として全力でサポートさせていただきます。