国税庁のホームページにある「簡易課税制度の事業区分」の表を見ると、第3種事業の例の中に「建設業」が含まれています。
そのため、ご自身の事業を第3種と考えている一人親方様は多いのではないでしょうか。
そう判断されるのも無理はありません。
しかし、多くの一人親方の場合、その働き方の実態から「第4種」に該当するケースが実は多いのです。
この違いは納税額に直接影響するため、知らなかったでは済まないことも。
この記事ではなぜそのような違いが生まれるのか、その判断基準を分かりやすく解説します。
一人親方の簡易課税、事業区分の基本:「建設業だから第3種」は本当?
まず知っておきたい基本として、消費税の事業区分は業種名でなく、事業の実態で判断される、という点です。
具体的には、「モノ(完成品)を引き渡す事業」か「技術やサービス(役務)を提供する事業」か…などで区分されます。
- 第3種事業のイメージ
自ら木材などの主要な材料を調達・負担し、加工して完成した住宅や製作物を「モノ」として引き渡す事業です。(みなし仕入率70%) - 第4種事業のイメージ
元請けの現場に入り、支給された材料を使って工事を行う、いわゆる「手間請負」が代表例です。
自身の技術や労働力という「サービス」を提供し、対価を得る働き方です。(みなし仕入率60%)
多くの一人親方様は、後者の働き方に近いのではないでしょうか。
ご自身の仕事がどちらの性質を強く帯びているか、まずはおおまかに捉えてみましょう。
判断に迷いやすい「3つのケース」
実際の現場では、単純に割り切れないケースも少なくありません。
特に、以下のようなケースは判断に迷いやすく、慎重な確認が必要です。
ケース①:「主要な材料」の範囲が曖昧な場合
法律には、何が「主要な材料」なのか(金額の大きさか、機能的な重要度か)という明確な定義がありません。そのため、ご自身が負担した材料が「主要」と認められるかどうかの判断は、意外に難しい点です。
ケース②:「有償支給」という取引がある場合
形式上、元請けから材料を「買い取って」工事を行う契約の場合です。
一見、材料を仕入れているため第3種事業に見えますが、その価格設定や取引の実態によっては「実質的には手間請負(第4種)」と見なされることがあります。
ケース③:1つの仕事に複数の事業が混在する場合
例えば、「材料自前で製作したモノの納品(第3種)」と「現場での取付作業(第4種)」がセットになっている場合です。
請求書が「一式」となっていると、売上をどう区分するかという問題が生じます。
知っておきたい、事業区分と納税額の関係
なぜ事業区分の確認が重要なのでしょうか。
それは、区分によって控除できる「みなし仕入率」が異なり、納税額に直接影響するからです。
仮に、課税売上高が年間800万円(消費税80万円)の場合で見てみましょう。
- 第3種(みなし仕入率70%)での納税額:80万円−(80万円×70%)=24万円
- 第4種(みなし仕入率60%)での納税額:80万円−(80万円×60%)=32万円
このように、同じ売上でも納税額にこれだけの差が生じます。
もし誤った区分のまま申告を続けると、将来、税務調査などで数年分の差額をまとめて納めることになり、資金繰りに大きな影響を与えかねません。
適正な申告のために
一人親方の簡易課税における事業区分は、思いのほか確認すべき点が多いテーマです。
税務署の判断や地域による慣行が異なる場合があるからこそ、法令や通達といった基本原則に立ち返って、ご自身の事業の実態を確認することが大切です。
判断に迷われる場合は、遠慮なく専門家にご相談ください。
適切な事業区分での申告により、安心して事業運営を続けていらっしゃる一人親方様も多くいらっしゃいます
この記事が、皆様の適正な申告のための一助となれば幸いです。
本記事は、一般的な情報提供および注意喚起を目的としております。
税法の解釈や税務署の運用は、個別具体的な事情や地域によって異なる場合があります。
この記事の情報のみを根拠とした税務判断は行わず、必ず税理士等の専門家にご相談くださいますようお願い申し上げます。