インボイス制度が始まり、免税事業者だった個人事業主や法人の多くが、消費税の計算をシンプルにしてくれる「2割特例」を利用されているかと思います。
しかし、この2割特例は永遠に使えるわけではありません。
「2割特例はいつまで?」という疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
また、その後も引き続き簡易的な計算を続けたい場合、「簡易課税」への移行手続きをいつまでにすれば良いのか、不安になる方もいるかもしれません。
この記事では2割特例の期限と、その後の選択肢について、分かりやすく解説していきます。
2割特例はいつまで?その適用期間を再確認
2割特例適用期限は、令和8年9月30日を含む課税期間までと定められています。
個人事業主の場合、課税期間は通常1月1日から12月31日です。
法人の場合、事業年度(会計期間)が課税期間となります。そのため、令和8年9月30日を含む事業年度まで、この特例を適用できます。
この期限が過ぎた後、皆さんの消費税の計算方法は、以下の2つのいずれかを選択することになります。
- 原則課税:売上にかかる消費税から、経費にかかった消費税を差し引いて計算する方法。
- 簡易課税:事業の種類ごとに定められた「みなし仕入率」を使って計算する方法。
多くの事業者にとって、複雑な経費の管理が必要な原則課税よりも、税額計算を簡便に行える簡易課税を選びたいと考えるでしょう。
そして、それがご自身の事業にとって有利な選択肢となるのかを判断することが重要です。
最終的に簡易課税を選択することとした場合、ここで一つの疑問が浮かびます。
「簡易課税への移行手続きは、いつまでにすれば良いの?」
2割特例を使った方は簡易課税の届出に特例があります
通常、簡易課税制度を適用するためには「適用したい課税期間が始まる日の前日まで」に「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。
個人事業主でも法人でも、これは「その事業年度が始まる日の前日まで」に届け出を出す、ということになります。
たとえば、令和9年4月1日から始まる事業年度で簡易課税を適用したい場合は原則として令和9年3月31日までに提出が必要です。
しかし、このルールには例外があります。
インボイス制度を機に課税事業者となり、2割特例を適用した方には、簡易課税への移行に関して特別なルールが設けられています。
それは「2割特例を適用した課税期間の翌課税期間中に、届け出を提出すれば良い」というものです。
例えば、個人事業主の方が令和8年分で2割特例を適用した場合、令和9年中に「令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨」を記載した届出書を提出すれば、令和9年分から簡易課税を適用できます。
法人の場合も同様です。
令和8年9月30日を含む事業年度で2割特例を適用した場合、その次の事業年度中に届け出を提出すれば、その事業年度から簡易課税を適用できます。
通常のルールと比べて、提出期限が1年間猶予される、非常にありがたい特例です。
まとめ:状況に合わせた賢い選択を
2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間まで。その後は、原則課税か簡易課税を選びます。
簡易課税への移行を考えている場合、通常は「その課税期間が始まる日の前日までに届出」が必要です。
しかし、2割特例を適用した場合は特例があるため、翌課税期間中(個人事業主の場合は翌年1年間)に届け出を提出すれば、間に合います。
これは「出し忘れ」に配慮された制度であり、ぜひ覚えておいてほしいポイントです。
【簡易課税への移行スケジュール例】
- 令和8年9月30日を含む課税期間:2割特例で申告
- 翌課税期間:翌課税期間:2割特例が使えなくなります。簡易課税を選択する場合は、この課税期間中に届け出を提出すれば、この課税期間から簡易課税が適用されます。
複雑な制度で悩むよりも、ご自身の事業に集中する時間を大切にしましょう。
もし、ご自身の判断に迷うことがあれば、税理士などの専門家に相談してみることも一つの手です。
専門家の力を借りることで、安心して事業を継続できます。