税務調査の連絡が来たのに、肝心の領収書が見当たらない…。
「経費として認められず、多額の税金を取られたらどうしよう」と、眠れない夜を過ごしていませんか?
大丈夫です。領収書がないからといって、すべてを諦める必要はありません。
この記事では、あなたのその不安を解消し、今からでもできる具体的な対処法を分かりやすくお伝えします。
個人事業主の税務調査で領収書なし!本当に経費として認められない?
大丈夫です。個人事業主の税務調査では、たとえ領収書がなくても経費として認めてもらえる余地は十分にあります。
なぜなら、所得税法などの法律では、「領収書がない」という事実だけで、即座に経費として認めないとは定められていないからです。
重視されるのは、その支払いが事業のために行われたという「客観的な事実」です。
例えば、飲食店を営んでいる方が材料の仕入れ費用の領収書を一部なくしてしまったとします。
その材料なくして売上は成り立ちませんから、商売をする上で通常発生する支払いであることは明らかです。
このように、事業との関連性が強く、支払いの事実を他のもので証明できれば、調査官に認めてもらえる可能性は高いのです。
ただし、過度な期待は禁物です。
支払った証明ができなければ、それは根拠のない主張になってしまいます。
全く何も証拠がないという状況では、やはり不利な扱いとなることを覚悟しなくてはなりません。重要なのは、諦めずに「証拠」を探し出すことです。
領収書の代わりになる!税務調査で有効な資料と準備の進め方
「領収書がない」といっても、必ずしも紙の領収書そのものでなければならない訳ではありません。
支払いの事実を客観的に証明できるものであれば、領収書の代わりとして十分に通用します。
まずは、領収書の代わりとなる「支払いの根拠となる資料」を一つでも多く集めましょう。
あなたが「支払った」と主張するだけでなく、誰が見ても「確かに支払いがあった」と納得できる客観的な証拠を示すことが、税務調査を乗り切るための鍵となるからです。
具体的には、以下のようなものが代替資料として有効です。
- 請求書・納品書・発注書
取引先に発行してもらったこれらの書類は、取引があったことの有力な証拠です。 - クレジットカードの利用明細・銀行の取引履歴
これらは「いつ、誰に、いくら支払ったか」が明確に記録されている第一級の資料です。もし手元になければ、カード会社や銀行に依頼して再発行してもらいましょう。依頼先にはご迷惑をお掛けすることになりますが、可能な限り用意しておいた方が良いです。 - 現金払いの場合は「間接的な証拠」を
現金払いでレシートもない、というケースが一番難しいかもしれません。
このような時は、その取引があったことを裏付ける間接的な証拠を探しましょう。
証拠としては少し弱くなりますが、何もないより遥かにましです。- 手帳や業務日報のメモ書き:「〇月〇日、△△社と打ち合わせ」「〇〇の現場で人工✕円」といった走り書きでも、信憑性を高めてくれます。
- 取引相手に「支払証明書」を依頼する:領収書の再発行は難しくても、「〇月〇日、確かに〇〇円を受領しました」という内容の簡単な書面を作成してもらえる場合があります。
ちなみに、普段の経理から「領収書」にこだわりすぎる必要はありません。
むしろ、但し書きが「お品代」となっている領収書より、購入内容が具体的に印字されている「レシート」の方が、証拠として価値が高いケースも多いのです。
見出し3:【要注意】所得税はOKでも「消費税」で不利になるケース
所得税の計算上は経費として認められても、消費税の計算では話が別というケースがあるため注意が必要です。
原則として、領収書や請求書(インボイス)がないと、支払った消費税分を、売上として預かった消費税から差し引くこと(これを「仕入税額控除」といいます)が認められません。
なぜなら、消費税法では、仕入税額控除(支払った消費税分を、預かった消費税から差し引くこと)の適用を受けるための要件として、「帳簿」と「請求書等(インボイス)」の保存が明確に定められているからです。
特にインボイス制度がスタートしてからは、このルールがより厳格に運用されるようになっています。
例えば、110,000円(うち消費税10,000円)の経費について、領収書がなかったとします。
- 所得税:他の資料で証明できれば、110,000円全額を経費として認めてもらえる可能性があります。
- 消費税:インボイスがないため、消費税の10,000円分を仕入税額控除することができず、その分納税額が増えてしまいます。
ただし、これは「原則課税」を選択している事業者の話です。
売上にかかる消費税額から納税額を計算する「簡易課税」や、インボイス制度の負担軽減措置である「2割特例」を適用している場合は、領収書(インボイス)の保存は仕入税額控除の要件ではありませんので、ご安心ください。
もし経費が否認されたら…知っておきたい追徴課税のリスク
最善を尽くしても経費が否認されてしまった場合、具体的にどのようなことが起きるのでしょうか。
これを理解しておくことも、冷静に調査に臨むために重要です。
経費が否認されると、その分所得が増えるため、追加の税金(追徴課税)が発生します。
否認された経費の分だけ利益が上乗せされる計算になるため、その増えた利益に対して「所得税」や「住民税」が追加で課税されます。
さらに、本来の申告が正しくなかったことに対するペナルティ(附帯税)も加わります。
附帯税には以下のようなものがあります。
- 過少申告加算税:本来より少なく申告した場合のペナルティ(追加税額の10〜15%)
- 延滞税:納付が遅れたことに対する利息に相当するもの
- 重加算税:意図的に隠蔽したなど、悪質と判断された場合に課される最も重いペナルティ(追加税額の35〜40%)
このように、経費の否認は単にその分の税金を払うだけでは済まない可能性があります。
だからこそ、事前の準備と誠実な対応が何よりも大切なのです。
最後に。税務調査で不安なあなたに伝えたい大切なこと
個人事業主の税務調査で領収書がないという事態は、本当に肝が冷えるものです。
しかし、すぐに諦める必要はありません。
この記事を通してお伝えしたかった「大切なこと」は、以下の3つです。
- まずは領収書の代わりになる客観的な資料を探しましょう。
- 所得税と消費税では扱いが違うことを理解しておきましょう。
- そして、何よりも誠実な姿勢で調査に臨みましょう。
一つひとつ、できることから準備を始めることが、不安を解消する一番の近道です。
もし、どうしてもご自身での対応に限界を感じたり、不安で押しつぶされそうになったりした時は、私たち税理士を頼ってください。
あなたの状況を整理し、専門家として最善の道筋をお示しします。
一人で抱え込まず、いつでもお気軽にご相談ください。

