確定申告に向けて、日々の取引で受け取った領収書やレシートの分け方に頭を悩ませる個人事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
効率的で、かつ経理上も問題ない書類整理方法を知りたい、というご要望にお応えするため、この記事ではそのコツをお伝えします。
確定申告に向けたレシートの分け方として避けたい非効率な方法
効率的かつ適切なレシート管理に向けて、まずは避けるべき方法がいくつかあります。
これらは、かえって手間が増えたり、後から書類を探しにくくなったり、税務調査の際に問題となる可能性があるためです。
一見、丁寧に見えたり手軽に思えたりする方法でも、実は非効率であったり、後々の手間を増やしたりする原因になることがあります。
税務調査の際に書類が見つけにくいと、調査官の心証が悪くなるだけでなく、余計な時間がかかってしまう可能性もあります。
たとえば、次のような方法は避けるのが賢明です。
- 領収書を重ねて短冊状に糊付けする: 一枚一枚の内容を確認するのに非常に時間がかかり、手間が増えてしまいます。後から特定の情報を見つけたい場合、大変な労力がかかります。
- コピー用紙の両面にレシートを貼り付ける: 内容の確認が難しくなるだけでなく、コピーを取ったりFAXを送ったりする際に不便が生じます。
また、両面印刷の書類と片面印刷の書類が混在すると、確認漏れの原因にもなりかねません。 - ノートやスクラップブックにレシートを時間をかけてきれいに貼り付ける: 一見、きれいに見える方法ですが、一つひとつのレシートを丁寧に貼り付ける作業は非常に時間がかかり、途中で挫折してしまう方が少なくありません。
レシートは頻繁に見返すものではなく、あくまで経費の証拠として保管するものですから、そこまで時間をかけて凝った貼り付けをするのは、確定申告準備の効率を考えると時間の無駄になりがちです。 - 何も整理せず、ダンボール箱などにまとめて放り込む: これは最低限の整理すらできていない状態であり、後から必要なレシートを探すのが極めて困難になります。
確定申告の準備や税務調査の際に、多大な時間を費やすことになってしまいます。 - 月別に封筒に入れても、レシートを丸めたまま入れる: 月別には分かれているものの、中がぐちゃぐちゃでは結局探しにくく、整理の意味が薄れてしまいます。
確定申告の準備を楽にするためにも、このような非効率なレシートの分け方や保管方法は避けるようにしましょう。
個人事業主におすすめ!効率的なレシートの分け方・整理方法
では、具体的にどのようなレシートの分け方や整理方法がおすすめなのでしょうか。
いくつかの効率的な方法をご提案します。
効率的な整理方法を実践することで、日々の記帳作業が楽になるだけでなく、確定申告前の慌ただしい時期の負担を大幅に軽減できます。
また、税務調査が入った際にも、落ち着いて対応できるようになります。
基本的な考え方
- まず1箇所に集める: レシートが財布や車内など、色々な場所に散らばっていると、紛失や計上漏れの原因になります。まず、レシートの一時保管場所を決め、そこに集める習慣をつけましょう。
- プライベートとビジネスを分ける: 事業用とプライベートのレシートが混ざっていると、後から仕分けする際に手間がかかります。受け取った時点で区別することが理想的です。
- 月ごとに分ける: レシートを月ごとに分けることは、基本的な整理方法として推奨しています。これにより、後から特定の期間の取引を探しやすくなります。
- 日付順に並べる: 月ごとに分けたレシートをさらに日付順に並べると、より探しやすくなります。新しいレシートを上に重ねて入れていけば自動的に日付順になる、といった自分なりのルールを決めて効率化しましょう。日付ごとにホッチキスで止めるのも一つの方法です。
具体的な保管方法の例
- 封筒やクリアファイルを使う: 最も手軽な方法として、月ごとに封筒やクリアファイルにレシートを入れていく方法があります。封筒やファイルには「〇年〇月分」と記載しておくと分かりやすいです。
- ケースファイルを使う: 12個に分かれているケースファイル(ドキュメントファイルなど)を利用すると、1冊で1年分のレシートを月別に保管でき、場所を取らずに済みます。会計ソフトへの入力が終わったレシートを都度このファイルに入れていくと効率的です。
- A4コピー用紙への貼り付けとリングファイル: A4のコピー用紙に、レシートを重ねずに片面だけ貼り付けます。テープのりを使うと効率的です。A4サイズの領収書はそのままクリップなどでまとめておきます。これを月ごとに分け、最後にパンチで穴を開けてリングファイルなどに綴じれば完了です。この方法であれば、税務調査で確認を求められた際にも見やすく、コピーも取りやすいというメリットがあります。
- 穴付きポケットファイルとリングファイル: キングジムなどのA4ファイルに、12ヶ月分のポケットがある穴付きポケットファイル(クリアポケットなど)を綴じ込みます。これに月ごとにレシートを入れていきます。控除関係書類や給与明細など、確定申告に必要な他の書類用のポケットもいくつか用意しておくと便利です。
さらに効率を高めるコツ
- 決済手段別に分ける: 現金で支払ったレシートと、クレジットカードや電子マネー、口座引き落としなどキャッシュレス決済のレシートを分けて保管すると、会計ソフトへの入力や、通帳・明細との照合作業が楽になります。特にクレジットカード払いの明細だけでは消費税の仕入税額控除が取れないため、レシートの保管は必須ですが、決済手段別に分けることで管理しやすくなります。
- 未処理のレシートの一時保管場所を決める: まだ会計ソフトに入力していないレシートは、一時的にクリアファイルなどにまとめておくと、紛失や入力漏れを防げます。このファイルをよく目につく場所に置いておけば、処理忘れも防げます。
- レシートにメモを書き込む: レシートの表面の余白に「誰と」「何を目的で」使ったかなど、後から見返した時に分かりやすいよう簡単なメモ書きをすることをおすすめします。このメモは、勘定科目の判断や、税務調査の際の証拠として非常に役立ちます。
これらの方法から、ご自身の事業規模やレシートの量、使いやすい文房具などを考慮して、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。
完璧を目指すよりも、まずはできることから取り組んでみましょう。
レシートの保存期間と電子帳簿保存法について
確定申告に関わるレシートの整理・保管にあたっては、その保存期間についても理解しておく必要があります。
また、近年、電子帳簿保存法という法律が導入されています。
レシートの保存期間
個人事業主の場合、レシートを含む帳簿や書類の保存期間は、原則として7年間です。保存は、税務署のためだけでなく、自分自身を税務調査などから守るための重要な証拠となります。
電子帳簿保存法におけるレシートの扱い
電子帳簿保存法には、大きく分けて二つの保存方法があります。
- 電子取引データ保存(義務)
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インターネットバンキングの取引履歴や、メールで送られてきた領収書、ウェブサイトからダウンロードしたレシートなど、最初から電子データとして受け取ったものは、原則として電子データのまま保存することが義務付けられています。これらを紙に印刷して保存するだけでは認められません。
- スキャナ保存(任意)
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紙で受け取ったレシートをスキャンしてデータで保存する方法です。これは必須ではありません。もしデータで保存したい場合は、解像度や検索機能など、一定の定められた要件を満たす必要があります。
紙のレシートは、引き続き紙のまま保存することも認められています。
これらのルールを把握しておくことで、確定申告に向けたレシート管理をより適切に行うことができます。
まとめ:確定申告に向けたレシート整理の第一歩を踏み出しましょう
確定申告に向けたレシートの整理は、決して楽な作業ではありませんが、避けては通れません。
しかし、ご紹介したような効率的なレシートの分け方や整理方法を取り入れることで、その負担を大幅に減らすことができます。
日々の小さな工夫が、後々の大きな助けになります。面倒に感じるかもしれませんが、早めに効率的な方法を導入することで、確定申告直前の「レシート地獄」から解放されるはずです。
日々の積み重ねが大事ですよね
まず、ご自身が取り組みやすい方法で、レシートの月別・日付順の整理を基本として始めてみましょう。
現金払いとキャッシュレス払いを分けるなど、さらに効率化を図る工夫も取り入れてみてください。
そして、ご紹介した避けるべき方法を意識して、無駄な作業は思い切ってやめてしまいましょう。
レシートの保管期間は原則7年であること、そして電子帳簿保存法という法律の存在も頭に入れておくと良いでしょう。
会計ソフトやアプリを活用することも、レシート管理を効率化する上で有効です。レシートをスマートフォンで撮影して取り込むと仕訳をしてくれる機能などもあり、経理業務を大幅に効率化できる可能性があります。
確定申告の準備をスムーズに進めるために、ぜひ今日からレシート整理の第一歩を踏み出してみてください。
ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。