開業届を出さないと罰則はある?知らないと損する、本当のデメリット

個人事業主として、あるいは副業で、ご自身の力で事業を始めたものの、日々の業務に追われ、行政手続きはつい後回しになりがちですよね。

特に「開業届」については、「出さないと、何か罰則があるのだろうか…」と、漠然とした不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな疑問に専門家として明確にお答えします。そして、罰則の有無以上に知っておくべき、本当のデメリットについて丁寧に解説していきます。

目次

開業届を出さない場合の罰則は?

まず、最大の懸念にお答えします。

所得税法上、開業届を提出しなかったことに対する直接的な罰則(罰金や懲役など)は、実は規定されていません。

なぜなら、開業届は、あくまで「事業を始めました」という事実を、所轄の税務署に知らせるための「届出」だからです。

納税や確定申告のように、怠った場合に延滞税や加算税といった明確なペナルティが課されるものとは、少し性質が異なります。

しかし、私たちは専門家として、その状態を放置することを、決してお勧めしません。

なぜなら、罰則がないからといって出さないでいると、本来受けられるはずだったメリットを逃すだけでなく、不利益を被る可能性まで生じます。

つまり、罰則はなくとも「デメリット」が存在するからです。

開業届を出さないデメリット①事業の「信用」に関わる、実務上の問題点

開業届を出さないことによる最も直接的なデメリットは、事業の「社会的信用度」を、客観的に証明できなくなる点にあります。

開業直後は、金融機関や取引先など、様々な場面で「開業した事実を証明する書類」の提示を求められるからです。

現在、その最も確実な証明となるのが、e-Tax(電子申告)での提出です。

現在、紙提出した際には収受印は廃止されたので、控えを受け取る事が出来なくなりました。

しかしe-Taxで開業届を提出すると、手続きが完了した際にメッセージボックスに届く「受信通知」(または「メール詳細」)が、税務署に書類が正式に受理された何よりの証拠となります。

この通知をデータで保存、あるいは印刷しておくことが、かつての「収受印」付きの控えに代わる、大切な証明になるのです。

この証明がないと、以下のような重要な手続きがスムーズに進まず、事業の成長機会を逃すことに繋がりかねません。

  • 屋号名義の事業用銀行口座の開設
  • 事業用のクレジットカードの申込
  • 事務所や店舗の賃貸契約
  • 融資の申込(日本政策金融公庫など)
  • 小規模企業共済(事業主のための退職金制度)への加入

開業届を出さないデメリット青色申告の特典を「逃しかねない」2つの理由

上記のような信用の問題に加えて、税金面で最も大きなデメリットが、青色申告の様々な特典を受けられなくなるリスクが極めて高まることです。それには、主に「2つの理由」があります。

理由①:申請期限を過ぎてしまう

まず最も多いのが、このケースです。 節税効果の高い「青色申告者」になるためには、「青色申告承認申請書」を、原則として事業を開始した日から2ヶ月以内に提出する必要があります。

この期限は非常に厳格です。 開業という行為を軽くとらえ、開業届の提出を意識していないと、この重要な申請書の存在自体を知らないまま、気づいた時には期限を過ぎてしまっているのです。

理由②:初年度の適用に疑義が生じる可能性も?

次に、期限内に青色申告承認申請書を提出したとしても、問題が生じる可能性があります。

青色申告は「事業所得」が対象ですが、その「事業」をいつから始めたのかを客観的に証明する上で、「開業届」は重要な役割を果たします。

もし開業届が未提出、あるいは提出が大幅に遅れた場合、事業を開始した日から2ヶ月以内の提出であったのか不明瞭になります。 (青色申告承認申請書にも開業時期の記入欄はありますが、その記入と一致する開業届が別途提出されていることで、より明確となります)

その結果、最悪の場合、初年度の青色申告の適用について税務署から疑義が生じ、認められない可能性もゼロとは言い切れません。

まとめ:「罰則はない」でも「提出しない」という選択肢はない

ここまで解説してきた通り、開業届を出さないことによる直接的な罰則はありません。

しかし、少しの手間と引き換えにするには割りに合わないデメリットではないでしょうか。

  • 事業用の口座開設や融資など、社会的な信用が求められる場面で不利になる。
  • 青色申告の機会を逃し、節税メリットを受けられなくなるリスクがある。

開業届の提出は、面倒な義務ではなく、あなたの事業を守り、成長させるための、最初の「権利」です。

この一枚の書類は、あなたの事業が公的にスタートしたことを示す、最初の公式な記録となります。

ぜひ、未来の自分のために、この重要な一歩を踏み出してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次